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おもしろい事・作品

おもしろい事・作品について記述したブログです。

反省会_文学フリマ東京(20170507)

5/7に小説のコミケ文学フリマ東京に参加してきました。
その感想などをつらつらと書きました。
下に目次を記載いたしましたので、気になった項目だけでも読んでくださいな。

☆目次☆

 1.販売物

  ●販売物のソース

  ●販売物

 2.メモ

 3.文学フリマに出展することの小説家としての

  ●メリット

  ●デメリット
 4.次回売り上げを伸ばすためにすること
  ●店頭設置
  ●配布物
  ●その他

 5.総評

 

 

1.販売物

 ●販売物のソース

  今回の販売物は"小説家になろう"というサイトで、作者"やまけん"として連載し、

  完結し、2017年1月にアップロードしたものをベースに同人誌化しました。

ncode.syosetu.com

 ●販売物

  上記の小説を加筆修正、人物挿絵の追加、表紙・裏表紙の追加をし、B5版冊子にしたものを1冊500円で販売しました。

eventmesh.net


2.メモ

 ●テーブルの上に敷くクロスはテーブル上だけでなく、店頭の前面に垂らせる大きいも

  のがよい。足元がみえるのは格好悪い。宣伝ポスター・イラスト等の大型印刷物を

  店頭の前面に垂らす形もあり。

 ●会場で通販会社のチラシ持ち帰る

 ●クロスは冊子とのコンントラストが付く色合いの方が、お客様の目に付きやすく良

  いのではないか。暗めの色を基調とする本なら、明るめのクロスといった具合に。

 ●フリーペーパーは必ず受け取ってもらえるので宣伝面では効果的。予算もあまりか

  からない。ただ、文フリ会場での冊子の宣伝につながるかどうかは疑問が残る。自

  分もいくつかフリーペーパーを受け取ったが、それらのサークルの同人誌を買うに

  は至らなかった。よほど印象的なフリーペーパーないと効果がないのでは?
 ●店頭に冊子の中の文体、文がわかるような宣伝物が必要なのではないか。一文、A3

  で印刷して貼るとか。タブレットPCで印象的な文のスライドショー(デザインもこ

  だわる)を流すとか。

 ●写真をバックにして、セリフ入りスライドにするとかどうだろうか。

 ●あらすじを書いたものを店頭に貼ったが、文字サイズが小さい。

 ●あらすじは大きくプリント!

 ●店頭にはなるべく1人で立つ。複数人の場合は交代制で売り子をするか、全員椅子に

  座るようにし、お客様と対峙するのは1人にする。複数人で同時に宣伝しない。

 ●売り子は小動物感を出した方がお客様は手に取りやすいかも。文フリの雰囲気的に

  は。

 

3.文学フリマに出展することの小説家としての

 ●メリット

  ・作者として元気をもらえる。

  ・普段とは違うジャンルの作家とも交流が生まれる。

  ・会場で、もしくは後々講評をいただける。

   今回はその場で読んで、無料で講評をしてもらえる企画もあった。

  ・作者と読者が交流できる。

  ・どういう人間が自分の作品に興味を持つのかわかる。

  ・イベント自体が落ち着いた雰囲気なので、トラブルの心配が少なく販売できる。
 ●デメリット
  ・わざわざ会場に足を運ばなくてはいけないので、Web上より見てもらえる人数は

   少ない。

  ・採算を取るのが難しい。技術と経験がいる。
  ・コミケなどの漫画系のイベントに比べると来場者数が少ないので、販売対象のぱ

   いが小さい。

  ・メイン層が少ないイベントでの販売であること。文学フリマなので、自分がメイ

   ンターゲットとして想定している「生物学研究者orそういう生物学的妄想を楽し

   める人」はそんなにいるわけではない。


4.次回売り上げを伸ばすためにすること
 ●店頭設置

  ・店頭全面に大きな文字のあらすじ、販売物宣伝ポスター設置

  ・タブレットPCで作品紹介スライドorスクリーンセーバーを出す。

  ・冊子の設置は全て縦にしておく。
 ●配布物

  ・印象的なフリーペーパーを用意する

  ・冊子の色合いは明るめ系にする。

  ・表紙で書いたくなるようなデザインにする。
 ●その他
  ・売り子は男性・女性の両方用意する。

  ・遠くに住んでいる方用に通販方式を確立する。買いたいけど足を運べない方はい

   る。同人誌用の通販会社を利用(5月中に手をつける)。

5.総評

 楽しかったし、濃い人も何人もいました。そういう方を見つけて購入し、こちらも宣伝するのが大事かなっと思いました。あと、店頭でお話までしてくださる方には、「自分が1番面白いと思う点を話すのではなく、相手が面白いと思いそうな点、興味持ちそうな点を話すようにする」を忘れないように。
 最後に一言、楽しかったのでまた参加しまっす!

Planet Biology_人種依存的麺文化_目次

※本小説は改訂・加筆し、「小説家になろう」(下記URL)に移管しました。

URL:http://ncode.syosetu.com/n2034dt/

 

Planet Biology_人種依存的麺文化_①

Planet Biology_人種依存的麺文化_②

Planet Biology_人種依存的麺文化_③

Planet Biology_人種依存的麺文化_④

Planet Biology_人種依存的麺文化_⑤

Planet Biology_人種依存的麺文化_⑥

Planet Biology_人種依存的麺文化_⑦

Planet Biology_人種依存的麺文化_⑧

Planet Biology_人種依存的麺文化_⑨

Planet Biology_人種依存的麺文化_⑩

Planet Biology_人種依存的麺文化_⑩(最終話)

「いらっしゃ〜」

「おっちゃん!宙下ラーメンこってり1つくださーい!」

 お店のドアを開けるなり、蘭子は開口一番で注文を唱えた。おっちゃんの挨拶も、自分たちの着席も済んでいないのに。

「はいよ〜」

 いつものことで慣れているのか、宙下一品(堀之内店)の店長こと、おっちゃんは背中で返事をしてラーメンを作り始めた。

 自分はそこまで常連でもないので、席に付いてメニューを見てから注文しよう。そそくさとカウンターの1番端に座った蘭子を追いかけ、自分もその隣に座る。

 にしても蘭子のテンションのV字回復っぷりは半端ない。たった30分前まで、この世の終わりのような表情で教壇でうなだれていたのに。

「宙一おごっちゃるから」の一言で目をキラキラさせやがった。

 準備満タンな蘭子は持参した髪留めゴムをカバンから取り出して、手慣れた感じで長い髪を一つにまとめはじめた。全然違う髪型を一瞬にして作り上げるこの行為は、女子の凄技の一つだと思う。

「早く注文しなよ。ラーメンは早さが命だよ」

 その早さに注文する側も含まれているのは初耳だ。まぁもったいぶってもしょうがない。

「こってりと半チャーハンで」

「はいよ〜」

 片手にチャーシューを持ったおっちゃんが、目を細めてにっこりしながら返事をする。このおっちゃんの愛嬌もこのお店の売りである。

 残り少ないが、ここで宙下一品(堀之内店)の宣伝をしておこう。宙下一品は惑星大学地球周辺および、地球のみならず、宇宙全体に展開している超有名ラーメンチェーン店だ。巷では「宙一(ちゅういち)」の名で愛されている。この惑星大学地球のある堀之内にも5年前にオープンし、学生を中心に人気を博している。

 おすすめは宇宙ラーメン(こってり味)だ。ブラックホールをイメージして作った極限まで濃縮されたスープは一度食べたら最後、もう逃れられない。

「はい、お待たせ〜。こってり二つと半チャーハンね」

 とか言っているうちにラーメンできあがり。

「おっちゃん!私のラーメン出すの、こいつに合わせて伸びてないわよね」

「蘭ちゃんひどいな〜。早く注文した分、スープいつもより多めに濃縮しておいただけだよ〜。」

「よし!」

 といって蘭子とおっちゃんは腕を交わした。どうやら伸びていたのはおっちゃんの語尾だけだそうだ。

「ずっ、ずー、ずるっ」

「にしても、あの院生、感じ悪かったわねー」

「ずるずるずる、ずー」

「蘭子が好戦的な言い方するからだろ。単位ほしくないのか」

「ずっ、ずー、ずるっ」

「だってあいつ、なんか偉そうだったんだもん。たまたま院試で勉強したことを思い出しただけなのに。私だって知ってたらこんな実験デザインしなかったわよ」

「それも含めてだろ。誰にも相談しないで急遽実験計画変えるからこういうことになるんだ。単位がもらえる保証が出ただけでもありがたいと思え」

 発表後、院生と教授に実験計画を勝手に変更したことをこっぴとく叱られたが、レポートをちゃんと出せば単位をだす了承を得た。進級問題は無事解決。

 許してくれた理由は「おもしろかったから」だそうだ。

「ん〜、にしてもあれ、トラウマになりそうだわ」

「あれって?」

「位置的価値(ポジショナルバリュー)よ。私、あれ聞くたびにうなだれそう。惑星発生学はやめて、惑星工学にしようかな〜。Planetの装置開発するやつ」

「そうか、もうどこの研究室にするとかも考えてんだな」

「まぁ、私はね。正史くんはしょうがないわよ。3年次転科だし。でもそろそろ考え始めたほうがいいよ」

 うーん、順当に行くとバックグラウンドを活かせるから、俺も惑星工学なんだよな。情報畑出身だし。でもそれじゃあ何のために転科したのか‥

「ごちそうさまー!実習の話も終わり!」

 蘭子は、店じゅうに轟くような大きな声をだしながら、丼をカウンターに置いた。

「食い終わるの早いな」

「早く帰って早くレポート書きあげたいからね。人生は短いんだから、嫌な時間はさっと終わらせて、次の楽しいこと向かわないと!」

 蘭子にとって、今日の実習は嫌のことにカテゴライズされたらしい。自分はと言うと、いろいろ波乱はあったが面白かった。というのが率直な感想だ。

「私だけ先にお会計で〜」

「はいよ〜、蘭ちゃんはっと〜。‥あっ、蘭ちゃんラッキーだねぇ。今日はお代はいらないよ」

「どゆこと?」

 と言って、蘭子はおっちゃんと自分を見た。

 どういうことだ?俺はまだ蘭子のおごり分を払っていないぞ。

 よく状況を理解していない2人を見て、おっちゃんはニヤニヤしながら蘭子の左側の貼紙を指差した。

 そこにはこんな文句が描かれていた。

 

「毎月1日は位置的値段(ポジショナルバリュー)の日!1番席の方はタダ!」

 

 今日何度目かのうなだれた蘭子は、髪留めがはずれ、カウンターの上で伸びきったラーメンみたくなっていた。

 

Planet Biology_人種依存的麺文化_⑨

蘭子は黒板の図を書き直しながら話した。

f:id:samaken:20161231225218p:plain

 蘭子も自信がなくなってきたのか、黒板の主張にクエスチョンマークが書き加えられている。

「自分もそう思います。蘭子の仮説が見当違いだとは思えません」

 思わず声を出した。しょげている蘭子を見ていたら、少し肩を持ってやりたくなったのだ。

「そう、そこなんですよ。大事な所は」

 院生は答えながら、蘭子に板書に書き加えた。

「こうも完全否定される仮説に思えない。でも実際に形成されたのはラーメン文化でも、パスタ文化でもなく、『そうめん文化』だった」

f:id:samaken:20161231225324p:plain

「う〜ん、な〜んかあとちょっとで出てきそうなんだよね。どっかでこんな話を聞いたような‥。院試の勉強のときだったかなぁ‥」

 院生がポクポクチーンしていると、後ろから声が聞こえた。

「…バリュー」

 教授が何か言っているらしい。

「何言ってるんですかー。黒ちゃんよく聞こえなーい」

 恐れ多くも先生をちゃんづけで呼びつける院生。研究室に入ったら、みんなこんな距離感なのだろうか。

                                                

「位置的価値(ポジショナルバリュー)」

 

 今度は自分達まで聞こえる声で言った。が、自分には何の事だがわからない、蘭子の方に振り向いたが、彼女も首を振って、分からないジェスチャーをした。何だ?ファストフードのメニューの話だろうか。

 教室のみんながこの後の教授の説明を待っているが、教授は一向に次の言葉を発しようとしない。

「あーっ。そうか。それならつじつまが合う!合うのか?」

 院生が声を上げた。

「どういうことなんですか?」

 自分は院生に質問した。

「詳しくは細胞生物学の教科書、『The Cell 第5版 第22章多細胞生物における発生 』に確か書いてあるから、そっちを後で見てもらいたいんだけど」

「つまりは、ニワトリの太モモを翼に移植したらカギ爪ができるってことなんだ」

「書いて説明したほうが早いな」

 そう言って院生は何やら、生物学らしき模式図を書き始めた。

「俺も専門じゃないから、詳しくは生物学の博士号も持っている黒ちゃんに聞いてほしいんだけど‥」

「本実験の誤りは、文化形成の運命を『決定された(determined)』か『決定されていない(not determined)の』の2値で理解しようとした所なんだ」

「この概念が間違っているわけではないし、実験デザインによってはこれだけで説明できたかもしれない。ただ今回はそうはいかなかった。もう一つ不足していた概念があったんだ」

「それが『位置的価値(positional value)』の概念」

「教科書にも書いてあると思うんだけど『細胞は特定のタイプに分化するよう方向づけられるよりもはるか以前に位置による決定を受ける』という概念だ」

「ニワトリの肢と翼の発生で説明するね」

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「左上に描いたピンクの絵が肢芽。将来、脚を作る組織」

「左下に描いた水色の絵が翼芽。将来、翼を作る組織」

「この二つの芽は最初は外見も同じで分化もしていない。ただ移植すると、全然似ていないということがわかる。肢芽から将来太モモになる領域の組織片を取り出し、翼芽に移植すると、移植片は翼の先端でも、太モモでもなく、指になるんだ。指は肢芽から作られる器官だ」

「つまり、移植した組織片は肢になる運命は方向づけられていたが、肢の特定部分になるまでは方向づけられていなくて、変更可能だったんだ」

「もちろんこの概念はPlanet Biologyにも拡げることができる」

「麺分化に詳しそうな蘭子さんに2つ質問したいんだけど‥」

 院生は蘭子の方を向いて質問した。

「‥なんでしょうか」

「ラーメンの伝播ルートってどこらへんが起源なのかな?」

「よく言われているのは中国北部です」

「じゃあ、そうめんは?」

「そうめんはラーメンとは違う地域で、よく言われているのは中国南部です…ってあっ!あー‥」

 何かに気づいた蘭子は頭を抱えて、教壇にうなだれた。

「蘭子さんは何か気づいたみたいだね。多分、僕と一緒の答えに行き着いたのだと思うんだけど‥説明する気力はなさそうだね」

「今回、ラーメン文化への分化能のみを有していると思っていた中国人達は、実はそうめん文化への分化能も有していた。つまり、ある種のいくつかの麺文化を形成するようには決定づけられていたが、ラーメンなどの特定の麺文化を形成する段階まではまだ方向づけられていなくて、変化しうる段階だったのだろう」

「で、ここから先は仮説なんだけど、移植した先の「南部」という合図に応答して、ラーメンではなく、そうめんを作りだしたんじゃないかな。ホントかどうかはわからないけど、暑いとこだしラーメンよりそうめんのほうがオールシーズン流行りそうだよね。まぁ、ここらへんの考察は10班の好きにしてくれ。お世辞じゃなく楽しみにしてるよ」

「はい。わかりました。」

 1日ぶりに、ただの屍に戻った蘭子の代わりに自分が返事した。

 しばらく復活しそうにないな。後でラーメンでもおごって励ましてやろう。

「黒ちゃん、最後に何かあります?」

 院生はそう言って、黒川教授の方を向いた。

 さすがに蘭子も顔を上げた。

 表情を変えずに黒川教授は3つ言葉を発した。

 

「キレイで分かりやすい概念は役に立つ。すごく広まる」

「だだその下には何があるかを私たちは日々忘れてはいけない」

「Planet Biologistだとしても、Planet Biologyだけをしていてはいけない」

 

 黒川先生は口を閉じ、元の真一文字の顔に戻った。

「‥はい。忘れないようにします」

 絞りかすになった蘭子からは、最後のプライドを守るような言葉が返ってきた。

 そんなズタボロな形で、自分と蘭子の初めての惑星生物学実習は終わったのだった。

 

Planet Biology_人種依存的麺文化_⑧

「そんな、だっておかしい。ありえない」

 両手で口を覆いながら、何度も画面を見直す蘭子。ただ何度見ても黄色がかった麺ではなかった。

「うん、みんなさっきとは違う答えにいたったみたいだね。ただ答えを決めるのにはちょっと足りないかな。他のサンプルも観察してみようか」

 そういって、店内の他の客、他の麺料理店、の丼にスライドしていった。同じ表示設定で、”麺料理“をクエリーとして投げて検索をかけたらしい。表示されたその映像には、上に乗っている具材は違えど、麺はどれも”そうめん”だった。

「どうやら、この街の麺料理はどれも同じ種類の麺を使っているみたいだね。ラーメンとは異なる」

「でもね、自分はこれでもまだ、一つの答えに至るには弱いと思うんだ。ちょっと季節を一つタイムスライドしていいかな」

「ど、どうぞう…」

 ショックを受けている蘭子は絞り出すように院生に返答した。

 院生は設定を「A.C.2000,Autumn」から「A.C.2000,Summer」に変え、Planetをタイムスライドさせた。Planetは1/4回転した所で止まり、画面には先程と同じ伊太利亜中華街が景色を変えて映しだされた。サンサンと照りつける太陽。ダイナマイトボディがギリギリまで露わになる店頭ガール。季節は一つ巻き戻り夏になった。

「じゃあさっきと同じ麺料理屋に入るよ」

 院生はマニュアルモードで操作し、画面を店内へと移した。

 

 

 厨房は前と変わらず湯気が立っていたが、テーブルの上の料理は明らかに違う様相を呈していた。秋にお客の前にあった麺丼は姿を消し、代わりにガラスの大皿が並んでいた。その上には白く透き通った麺が折りたたまれ、所々に溶けかけた氷が添えられている。大皿の前には透明感のある茶褐色のスープが入ったお猪口と、生姜、ミョウガ、青ネギなどの薬味が入った小鉢が置かれていた。

 画面上の清涼感あふれる麺料理もまた、アレであった。

 

「冷たい‥そうめん」

 蘭子はほうっとした顔で、画面上にある料理名を唱えた。

 映像は他の客、他の麺料理店へとどんどん切り替わるが、どれもそれも、冷たいそうめんであった。

 蘭子は映像を疑って何度も見直すのを諦め、ただただ自分が見落としていた結果を見つめた。

「これで最後にしようとおもうんだけど‥。これは、いま観察していてたまたま目に入ったんだけど」

 院生はそう言うと、店頭の看板に画面が切り替わった。

 2-0からのダメ押しからの3点目がゴールネットを揺らした。と同時に、自分は数分前の誤ったバイアスを思い出した。

《中華街に軒を連ねるお店にはどこも「麺」の文字が入った名前。単に中華街という訳ではなく、ラーメン店を中心とした中華街なのだろう。》

 自分もいつの間にか蘭子の提唱するラーメン愛にほだされ、バイアスがかかっていたのだ。「麺」という字を見たら「拉麺」に自動変換されるほどに。

 

お店の看板には「素麺」の二文字が描かれていた。

 

他のお店を見ても、

「元祖素麺屋」

「素麺一番」

「チキン素麺」

「台湾素麺」

「素麺太郎」

「素麺二郎」

「素麺豚野郎」

「素麺大好き小池さん」

「素麺ズ~不思議な国のニポン~」

 …etc.

 と言った具合に、「拉麺」屋だと思って店はすべて「素麺」屋だったのだ。最後の方はなんかちょっと怪しいが。

「看板の結果は直接的には関係ないけど、これらの形態学的観察を持って判断するならラーメンというよりも『そうめん文化が形成された』というのが妥当なんじゃないかな」

 そう言って院生は操作画面から頭をあげ、蘭子の方を見た。

「自分もまさか、ここまで違う側面が見えて来るとは‥、って驚いたよ」

「科学って恐いね」

 その恐ろしさを身を持って体感しているのは間違い無く隣にいる蘭子であろう。次点で自分。

「で、でも‥」

 視線を下に向け、声を震わせて蘭子は話し始めた。

「こんなことありえない。だって、この実験であり得る結果はこの2つしかないはずだもの‥」

 

Planet Biology_人種依存的麺文化_⑦

「はい。大丈夫です。正史くんお願い」

 蘭子に促され、タイムスライドログから依頼されたシーンを選んで、タイムスライドした。画面には先ほども見せた伊太利亜中華街が映しだされた。

「えーっと、質問したいことというのは‥」

 手を組み動かしながら、院生は視線を地域拡大コンソールから蘭子へ向けた。

 

「これって、本当にラーメンなんですか?」

 

「です」

 彼がゆっくりとした調子で発した言葉は、

 教室、

「!」

 蘭子、

「!?」

 自分、

「あっ」

 にミリ秒単位で電撃を走らせた。

 自分にいたっては、何かつっかえが取れたと同時に言葉が漏れた。

「どうゆうことかしら?」

 蘭子は過剰に落ち着いた口調で院生に聞き返した。

「いやだって、まず何をもって『ラーメン』であるっていうの示してないよね。普通はそこを示してから、結果を見せて、本研究におけるところのラーメンが作られていますね」

「ってなるのが普通だと思うんだけど。まぁ、まだ実習生だしそこらへんは慣れてない所だからしょうがないんだけど」

 と院生が話した所で、隣の蘭子が一変した。

 顔の表情は変えずに保っているが、落ち着いた雰囲気の練度があがり、綺麗な髪が少し逆立つような振る舞いを見せている。プシーキャット。

 高校から惑星生物学に浸かっていた蘭子のことだ、「慣れていない」という言葉が琴線に触れたのだろう。

「定義を言えとまでは言わないけど、蘭子さんは何がラーメンだと考えていて、これまで見せた結果のどこでそれを提示できたというのかな」

 クラスメイトは蘭子の方を向き直した。蘭子はあまり間を置かずに話し始めた。

「はい。私はかん水を使ってできた黄色がかった麺と、スープからなる料理をラーメンとみなしております。そしてそのことは、地域拡大コンソールの中華料理店内の映像から、形態学的に判断いたしました。見逃していたら申し訳ないのですが」

 少し攻撃的な言い回しで蘭子は返答した。

「それは粗くないかな」

 院生もあまり間を置かずに答えた。

「と、申されましても、本実習で各班に配布されたPlanetは一つ。成分分析でかん水が含まれているか解析するのは手法として適切かと。まぁ、基礎惑研ほどの施設があれば別ですが‥」

 基礎惑研ってなんだ?基礎惑研を知っているっぽい何人かのクラスメイトはクスクスと笑っている。

「ちがう」

「粗いって言ってるのは、どの手法を選択したかではない。粗いって言ってるのは、あなたが選択したその形態学的解析そのものだ」

 蘭子の攻撃的な口調に呼応して、院生はさっきまでのオブラートに包んだ言い回しをやめた。

「たぶん今言われても自分の解析のどこが粗いのかはわからないと思う。けど、レポートを書く際の考察に関わる大事な所だから、結果ははっきりさせておきたい」

 蘭子は怒るというか、この院生は何を言っているのだ?という表情を見せている。

「ちょっと借りるよ」

 そう言うと院生は自分の近くにきて、Planetの表示設定を変え始めた。

「何がしたいのかしら」

 ポカンとした表情で見守る蘭子。とクラスメイト。鋭い視線で院生の操作を見つめているのは、話が長くて再び船を漕いでいた教授。と自分だけだった。

「確信はないんだけど‥」

 院生が設定を変えていくと、先ほども表示した店の映像が、湯気の立った丼へと、解像度を下げずにズームアップしていき、丼を真上から映しだした。先程と同様に湯気が丼を覆い隠していて色彩が不明瞭である。

「みんなに配ったPlanetの個数は少ないけど、ヴァージョン自体は最新の物を使ってるんだ。だから、組織学的、形態学的解析だけなら、最新のソフトで使われている設定を駆使して、相当微細な構造まで観察できるんだよ」

 院生は独り言をつぶやきながら、「色彩明瞭」の設定をONにした。スープ、麺、具材の輪郭が表れ、色彩が付いた瞬間教室がざわついた。

「ざわ‥ざわ‥」

 クラスメイトは一様に、明瞭になった丼を見ては隣の人と目を合わせている。

 それもそのはず。画面に写しだされた丼には、京だし風の透き通った茶褐色のスープ、軟骨の入った鶏団子、三ツ葉が麺の上に添えられていた。

 そして、具材が除けられあらわになったその下には、通常のラーメンより細く、また微かに透明感の残る白色の麺が折りたたまれていた。これは‥

 

「温かいそうめんだね〜」

 

 女生徒が答えたその名が満場一致の答えだった。

 そう、そうめんである。

 

 蘭子がラーメンだと思っていたそれはラーメンではなく、そうめんであった。

 

Planet Biology_人種依存的麺文化_⑥

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「今回私たちの班は『人種依存的麺文化発生機構の証明』を目的として実験を始めました」

「麺文化というのは、『人種』で決まるのか、それとも住んでいる『土地』で決まるのか、そのどちらなのかを明らかにしようという証明です」

「ちなみに私は、こと『ラーメン文化』に関しては人種依存的である、という確信めいた仮説を持って本実験に臨みました。そのことを証明するため、文化伝達媒体として中国人とイタリア人を用いて、民族交換移植実験を行いました」

「その結果どうなったかは、みなさま知っての通りかと思います」

「中国に移植したイタリア人(パスタ文化伝達媒体)はラーメン文化を形成し、

 イタリアに移植した中国人(ラーメン文化伝達媒体)もラーメン文化を形成しました」

 実験結果のまとめを描ききった蘭子はチョークを置き聴衆に体を向け直した。

「しかも後者の中国人においては、湯餅から始まるラーメン文化発生を忠実にたどるカタチでラーメン文化を形成しました」

「この遠く離れたイタリアの地で」

 蘭子はその一言を、教壇の縁を両手でつかみながら語気を強めて話した。

 一呼吸置き、まわりが少し静まり帰ったことを確認した後、蘭子は話を再開した。

「これらの結果から、私たちがこよなく愛するラーメンは『人種依存的麺文化』であること、パスタは人種『非』依存的麺文化であること、を示すことができました」

 教壇を掴む手に力が入り、蘭子の細く白い手に血管がうかぶ。

「つまり!」

「最初に話したとおり、ラーメン文化はっ、ゲノムに刻まれていて、その発生過程は、『土地』という環境要因に左右されずどこの世界どこの国においても再現する」

「そういった文化である。ということ」

「です!」

「(こんな感じかな)」

 緩んだ顔でこちらに振り向いて、小さく声をかけてきた。

「これにて10班の発表を終わります。ご静聴ありがとうございました」

 蘭子は深々とお辞儀をした。自分も蘭子につられるように頭を下げた。

 「ぱちぱちぱちぱち」

 クラスメイトの拍手は他の班より大きかった。それだけ、自分たちの班の発表を評価してもらえたということなのだろう。

 心配していた進級問題もこれで回避できそうだ。

「あまり時間はないですが、何か質問ある人いますか?」

 蘭子が教室を見回すが、手を挙げている人はいない。ツッコミどころがない、すっきりした結果ということだろうか。正直、自分も質問側の立場だとしたら、何を聞いたらいいのかノーアイデアだ。さっきまでは何か気になっていることがあったのだが。

「じゃあ残り時間、考察を述べさせてもらうわ」

 といって蘭子は眼を星型にキラキラさせながら話し始めた。

「今回の実験結果は何もラーメン愛の再確認だけでないの」

「今後はこのPlanet Biologyで明らかにした所からさらに、分子生物学のレベルまで踏み込んで、ラーメン文化発生に関わる遺伝子を同定し、このPlanet上の全民族にその遺伝子を強制発現させるわ」

「そして世界はラーメン愛に包まれるの」

「どこに行ってもラーメン文化があり、ラーメンが食える。地球だけにとどまらず、惑星移植耐性の強い民族を使って、火星でも、金星でもラーメン文化を作り上げてみせるわ。そう、全惑星ラーメン補完計画に向けての…」

 

「あのっ、ちょっといい?」

 蘭子の宇宙規模のラーメン補完計画トリップを遮るように、教室前方左側、入り口近くから声と手が上がった。本実習のチューターである院生だ。

「どうぞ。何かし」

「最後から2番目にタイムスライドしたやつ出してもらってもいいかな?」

 堂々とした態度を崩さない蘭子に対して、院生は食い気味で話してきた。

「A.C.2000の伊太利亜中華街のやつ」